2010/02/06
カメラはタイムマシンになる。
今回はここまでのまとめ的なことをつらつらと。
思ったよりも深みにはまりつつある「写真」だが(笑)、これには理由がある。カメラは「過去を見る目」を助ける、そこに気がついたのだ。「龍学」において、民俗学的なあれこれをつついて考察しているが、なかなか目の前の光景から往時をしのぶのは難しい。付近一帯が古代を保存しているような所ならともかく、大概は近代的なビルや雑踏に囲まれて古代の痕跡は残っている。あたしのあまり感性豊かでない目で見ても「ふーん」くらいにしか思えないのだ。
これが、カメラのフレームで周辺の光景をカットしていくと、往時の雰囲気が強調されてくる。「あぁ、なるほど」と思うことが増えて来るのである。そして、これはまさに写真の重要事でもあるようだ。はたしてカメラというのは対象があったらシャッターが切れる、というものではなかった。対象をアタマの中で「絵」として切り取れてからシャッターが切れるのだ。この「写真が撮影される仕組み」と「過去を見る目」というのはすこぶる相性が良いように思う。うまく相乗効果が発生するとカメラはタイムマシン(タイムスコープ?)になる。
しかしその「タイムマシン回路」はカメラ側にあるのではなく、カメラを触媒に自分側にできて来るものだ。別に過去を切り取りたい訳じゃなくてもこのような「写真回路」が自分側にできる仕組みは同じだろう。今では知り合いのプロの写真家が「まずは “写るんです” でそこそこ撮れるようになって、話はそれから」と言っていた理由が良く分かる。もっとも現状コスト面では安価なコンデジの方が良い感じもするが(笑)。
だから、以下述べるカメラを扱う技術的なあれこれや、一眼が良いのレンズがナンだなどというのは「話はそれから」の問題だ。「タイムマシン回路・写真回路」を見つけるにはコンデジフルオートで露出をプラスマイナスできるくらいで十分だ。そこで1000でも2000でもシャッターを切ったら、その先何が必要かは人それぞれに見えて来るように思う。
Lv2(/100)カメラマンの写真術(笑)
そんな訳で以下これまでに学んだカメラの技術的な所をまとめる。右の「メモ」と重複する所もある。もっともこれはLv1→Lv2(/Lv100)の最初の一歩にいるあたしの言うことなので、十二分に眉に唾をつけておいて頂きたい(笑)。また、民俗学的なモチーフを撮ることが多い、という所に注意なく偏って書かれているのもご注意。
・なんちゃって一眼でファインダを使う
・構図の基本
・設定の流れ
・思いつきあれこれ
・一眼は何が違うか
なんちゃって一眼でファインダを使う
あたしは「Nikon COOLPIX P90」というカメラを使っている。コンデジだけれどあれこれ設定のいじれるなんちゃって一眼タイプだ。「人と違った」ところへカメラを向けがちであることが予想される場合は(笑)、薄型コンデジよりこのタイプを選んだ方が良いと思う。なぜなら、人目的に「あ、写真撮るヒトなのね」と奇異な撮り方にも納得して頂ける可能性が上がるように思うからだ(笑)。
それはともかく(いや、冗談ではないが)、このタイプを使うメリットはグリップとファインダの使い勝手の良さにあると思う。思うに一定以上写真に取り組もうという場合は液晶モニタでなくファインダを使う方が良い。液晶モニタは撮影した画像のチェックに使う。理由は五つ。
・ファインダ覗いてる方が「それっぽく」見える。
・バッテリの保ちが良い。
・固定力が格段に上がる。
・より本格的なカメラを使う際の練習になる。
・没入度が上がる
先に述べたような「人目」問題は馬鹿にならない。昨今ろくでもないカメラの使い方をするおばかちゃんが多いので、周辺の人に「納得して頂く」雰囲気を持っているのは重要だ。
次にバッテリの保ち。デジカメのバッテリはほとんど背面の液晶表示に使われる。大概のカメラはファインダモードにすれば液晶は消えるだろうから、バッテリが格段に保つようになる。あたしは常時予備のバッテリを携帯しているが、丸一日となると液晶つけっぱでは2個では保たない。
両手のグリップに加えてファインダを覗くと頭がカメラにつくので三点支持になる。これによるカメラの安定は大きい。片手で構えてぱしゃっと撮れれば格好良いが、それは「撮れれば」の話である。微妙な手ぶれは背面液晶では分からない。帰ってから泣かないためにも、まずは実利重視で。
カメラの設定を変えるボタン類は「見て操作」していては遅い(マニュアルモードでは特にそう)。親指が勝手にぴこぴこやってくれるのが良い。ファインダ操作で頑張っていると自然と手元は見なくなる。一眼など使うことを将来目している場合は必須だろう。
また、最重要であろう点が「没入度」が違うということだ。ファインダを覗くと「対象と自分」だけの世界となる。この集中は多分重要だ。ただし、危ない(笑)。アブない、ではなく、足下とか迫る自動車とか雨天でカメラ濡れ過ぎじゃね?とか文字通り危険なのだ。安全を確保する「慣れ」は必要となるだろう。
そんな感じで「なんちゃって一眼でファインダを使う」という選択は良かったように思う。もっともこのタイプは見かけはごついが、カメラ性能そのものは薄型コンデジと変わらない(詳しくは「一眼は何が違うか」参照)。望遠機能が優れている、程度だ。「薄型コンデジ<コンデジなんちゃって一眼<一眼」、というのは誤解である。携行性を重視したい方は迷わず薄型にして良いと思う。
構図の基本
色々あるようだが、ぶっちゃけあたしは「三分割構図」しか知らない。勉強がおっくうなのではなくて、あたしにとって基本構図とは組み合わせ要素を減少させることが第一の目的なので、これで良いのだ。次の「設定の流れ」で見るように、マニュアルで撮る写真は結構いろいろな要素の組み合わせをしないといけない。構図を変えるとまた設定し直しである。なので、初歩のうちは構図は多少バカの一つ覚えでも良いだろう、ということにした。以上をふまえて。
・三分割構図
・水平を出す
・AFロック
あたりを押さえておこう。
その「バカの一つ覚え」に三分割構図を選んだのは、もっとも汎用が効く構図だからだ。この構図は画面を3×3に分割するというもの。そして、分割線上、ないし交点にメインとなる対象を持ってくる。中央にメインを置くのを「日の丸構図」と言うが、これは素人臭いというだけの理由で避けられるのではない。人の目は写真を見たときまず中心を見る。で、中心にメインがあるとそれで「見終わってしまう」のだそうだ。背景との関係も見て欲しいときはメインを中心からずらして、視線が写真全体を追ってくれることを狙う。
この分割線はあたしのカメラだとファインダ上に表示させることもできる。そのくらい汎用の構図だということだが、これには「水平を取る」便宜も絡む。意外とカメラは水平に構えられないものだ。光景に騙されて傾きもする。ここで、問答無用に垂直・水平なものにこの分割線を合わせ、そこから三分割構図になるようにカメラを垂直・水平移動させて撮ると傾きのない写真が撮れる。写真学校ではまずこの水平を出すことを徹底して仕込まれるそうだから、素人も重視して練習しておくのが良いだろう。
そして、上記に絡んでピントの位置が問題となる。中心にメインがないと、結構とんでもない所にピントが合ってしまう。多分今のデジカメはピントを合わせた位置をファインダ上(液晶上)で表示してくれるだろう。あたしのカメラは左のように [ ] の位置でピントの合っている所を報せてくる。まずはこれを見忘れないよう良く確認したい。で、メインにピントが合ってくれない時に「AFロック」という技術を使う。まず、中心にメインを持って来てシャッター半押しでピントを合わせ、半押しのまま本来の構図にずらしてシャッターを切る。この半押しのまま画角をずらすのをAFロック(フォーカスロック)と言う。もちろん距離が違ってしまってはダメなので、立ち位置は変えない。
さらには「マニュアルAF」というのもある。画面上の任意のポイントにピントを合わせられる。ちょっと時間がかかるのでこれメインにするかどうかはまだ分からない。その上さらには(笑)、まったくのマニュアルフォーカスもあるのだけれど、これはお世辞にも使い勝手が良いとは言えない。かなり特殊な、例えばフェンス向こうの光景を撮る、などの場合以外は使わないだろう。
設定の流れ
露出をマニュアル(Mモード)で設定するとなると結構あれこれの組み合わせが必要だ。写真の入門書とか読んでも「結局どうすりゃ良いのさ!」となりがちだが、場合によって組み合わせを変えるのが撮影なのだから仕方がない。大雑把には以下のようになる。
1. ISO感度を決める
2. ホワイトバランスを決める
3. 絞り(f値)を決める
4. シャッタースピードを決める
5. 何パタンか撮る
晴れの日に固定されたものを撮る時は基本上の流れである。
当然シャッタースピードが最初に決まる場合もあるので(例えば流水をスローシャッターで撮りたいとかスポーツのワンショットを高速シャッターで撮りたいとか)、結局は各要素の内容を理解してその場で組み合わせることになるが。
ISO感度はかつてのフィルムにあたるCCDセンサの感度のこと。64/100/200/400/800/1600/3200/6400などと設定できるだろう。数値が大きいほど暗い所で明るく写る(高感度である)。が、数値が大きくなるほど画面はざらつく。この兼ね合いは把握しておきたい(カメラ性能による)。あたしのカメラはISO400でややざらつき、ISO800では明らかにざらつく。高性能カメラだとISO1600くらいまでは結構使えるらしい。薄暗い所で白いものを撮ると良く分かるので、撮り比べて把握しておきたい。
あたしは普段晴れ・昼間の曇りなどではISO100固定で、シャッタースピードが1/20を下回りそうになると感度を変える(手持ちで)。ちなみに手ぶれ補正のないカメラだと分水嶺は1/60くらいらしい。
ホワイトバランスはカメラ性能に左右されるものだろう。あたしのカメラは色々設定はできるが、良く分からないのでAUTOのままだ。曇りだからといって曇りモードのホワイトバランスにすると写真が黄色がかってしまうし……。これは保留項目だ。
絞り(f値)は、数字が小さいほどたくさん光が入る(開放)。大まかには全体を均一に写したい時は絞りを絞る(数字を大きくする)。逆に背景ぼかしやメインを際立たせてシャープに写したい時は絞りを開放する(数字を小さくする)。特に左のような背景ぼかしをコンデジで行う際は、対象を望遠でとらえて絞りを開放すると何とかボケてくる。
以上が決まるとシャッタースピード如何で露出が決まる。無論シャッタースピードを先に決めれば絞り如何で露出が決まる。景観など「動かないもの」を撮ることが多い場合は絞りを先に決めることが多くなるのじゃないかしら。現状このこの2項目をいじってあれこれ工夫するのが現場の撮影である。撮るものが決まっていて構図次第でISO感度から決め直すということはあまりない。
ちなみにこの2項目をいじると露出がどんなかをしめす表示がファインダ上にされると思うが、何となく±0というのは明るすぎるように思っている。これは多分コンデジが基本的に人物ポートを明るく撮ることに偏って設定されているからだろう。個人的には基本アンダー気味(露出がマイナス表示を示す)に撮ることが多い。
基本的にはたくさん撮っておくことである
いずれにしても少し構図を変えるとカメラに入る光の量も変わるので、絞りとシャッタースピードはその度にいじらないといけない。しかもぶっちゃけ後でPCに落して大きくしてみないとどんな風に撮れているかの詳細は分からない。少しずつ絞りとシャッタースピードを変えながら同じ構図で何ショットも撮っておくのが良い。また、指が追いつかないうちは「絞り優先(Aモード)」「シャッタースピード優先(Sモード)」があると思うので、片方に専念したら良いだろう。露出は大まかに「露出」として上下させられるはずだ。
思いつきあれこれ
大体以上なようなことを頭に写真を撮っているが、後は現場で思いついたあれこれ。
・装備
・三脚
・ブレ予防
・可変液晶
・神社の撮影(ちゃんとお詣りしましょう)
周辺装備は「カメラバック」と「ブロアブラシ」と「レンズクリーナー」がまずは必要だろう。あたしはカメラバックはウェストポーチ状態のものを使っている。これはカメラの大きさによるだろう。重要なのは行動が制限されない状態に手早くカメラをしまうことができる、という点だ。ちょっとした崖を下りるとか、そういう時に首からカメラをぶら下げていると危ない。
後の二点はレンズに埃がついたり雨滴がついたりした時に必要。結構これらは写真に写っている。ブロアブラシだのレンズクリーナーだの言っても大袈裟なものでなく、左のようにパックになってるので十分だ。あ、後雨の日にはカメラのボディについた雨を拭く吸水性の高いハンドタオルが必携。
実はまだあまり三脚を使っていない。なので、結構ぶれている写真が多い(笑)。本来は1/60よりシャッタースピードが落ちるような際は三脚を使うのが当たり前のようだ。手ぶれ補正と言っても何となく Photoshop でいう「ぼかしの詳細」がかかったような写真になるような気がするので、補正がかからないに越したことはない。脚一本を素早くのばして一脚状態にするだけでも結構固定力は上がる。これからはカメラに三脚がついている状態をデフォルトにしようと思う。今まで気がつかなかったが、結構カメラマンは三脚のついた状態でカメラをぶら下げている。あたしの三脚は左の「SLIKスプリントPROII」。これはそう簡単に壊れないようなものを求めるのが良いだろう。また、脚を手早く伸ばせる仕組みが重要でもある。
その三脚のない状態でのブレ予防だけれど、これには上で述べたファインダ使用で固定力を上げる他に、「寄りかかれるなら寄りかかる」というのが効果が大きい。左のような暗さを撮ろうとしたら単純な手持ちではもうどうにもならない。壁でも電柱でも寄りかかってしまうと格段にブレはおさまる。むろん橋の欄干手すりなど肘がつけるならつく。また、望遠状態だとファインダ上の画面がぶるぶるしていると思うが、それが本来のブレだ。シャッターを半押しにすると揺れが滑らかになって安定してる気になるが、それが手ぶれ補正である。これが分からず、「おっ、半押しにすると気持ちが集中して手ぶれがおさまるのか」とかはじめのうち思っていた(笑)。
で、えー可変液晶。あたしのカメラだけの話。
宣伝するつもりじゃないが、これは結構良い。いや、凄く良い。何か二眼レフカメラ使ってるような気持ちになる所も楽しい。特に石仏なんかを撮る人には大変良いのじゃないかと思う。低位置をあおりで撮ることが容易である。普通はモニタできないのじゃないか、ていうかこの仕組みなしでローアングルのあおりってどうやっているのかしら。そこまで極端じゃなくても、三脚で少し低く構えた時も楽ちんだ。この点は強調して良いだろう。ただし、ローアングルのあおりはパンチラ撮ってるような格好に見えなくもないので周辺に十分注意が必要ではある(笑)。
あと、これは写真技術ではないけど、神社などを撮影する際はきちんとお詣りをしてから撮影したいものだ。ずかずか鳥居をくぐって来たと思ったらバシャバシャ撮り始める、というのはいただけない。あちこち神社をまわると、やはり周囲の人達がその空間を大事に保っているということが分かる。信仰心如何に関わらず、礼儀は必要である。
で、場合によっては一日十単位の拝殿を前にすることもあるが(笑)、ここで問題なのがお賽銭だ。これは日々意図的に準備しておかないと間に合わない。特にあたしのように「お賽銭は五円玉にしないとバチが当たる」と教え込まれて育った身としては、五円玉でないお賽銭は考えられない。今や「お賽銭用五円玉専用小銭入れ」を持ち歩いている始末である(笑)。しかも五円玉がみんなピカピカと言う……(やりすぎ)。
一眼は何が違うか
一眼レフタイプのカメラを使えば写真はよりきれいに撮れる。これは実際そうである。どう頑張っても「コンデジは性能上がって来てるからもう一眼と大差ない」とはならない。どう違うのかと言えばこう違う。
左が現在多くのコンデジが採用しているCCDのサイズ(あたしのカメラもそう)。右が一般的な一眼が採用しているCCDのサイズ。高級機種はより大きく、かつての35mmフィルムと同サイズとなる。こういった問答無用の違いがあるのだ。いくら「画素数」が多くても、その「画素」(CCDの1センサー)の大きさがまったく違うのだ。無論大きい方が幅の広い色彩に反応する。あまりにあからさまなので、上の比較図をもって「コンデジと一眼の違い」が示されることはないようで、目的がどうのモチーフがどうのと語られているが、これが現実というものだ(笑)。だから、写真の「きれいさ」を第一に求めるなら一眼にすべきである。
一眼レフを使っている訳ではないのであまり詳しいことは言えないが、カメラの仕組みというのをつらつら見ているとやはりコンデジというのは一眼レフのオモチャ版である。そもそも画質に関して比べるようなものではないのだ。
また、一眼タイプはレンズが豊富に存在し、交換できるというのも大きい。これも実際どうなのかは分からないが、ちょっとしたレンズならあたしのカメラが2台買える。これで差が出なければサギである(笑)。
だが、しかし。
じゃあすぐにでもオマイは一眼が欲しいのかと言ったらそうでもない。
下の写真は失敗編である。失敗というより途中で「俺にはムリだー」と投げやりになってとりあえず撮っている(笑)。
あたしにはまだ撮れない。
住宅地の中、駐車場の脇に薮があって、その薮の中に社があった。パッと見は単なる薮である。ちらりと鳥居が見えた瞬間はたまげた。文章で書いていても何のことやらさっぱりだが、また、そういうものを表現するために写真があるのだが、つまり、あたしはその時の自分の「たまげた」感じを撮影することができなかったのだ。
その、見かけただの薮の中に隠されるように小社がある、という状況をどう撮ったらその感じが伝わる絵になるのか……未だに分からない。構図なのか光の加減なのか……。いずれ再チャレンジはするが、要するにあたしの「写真回路」はまだこの小社をとらえることができなかったという訳だ。
これが、例えばそのとき手にしていたのが高性能の一眼だったら撮れていたのかと言ったら、そんなことはないだろう。どう撮って良いか分からないものが一眼なら撮れるという道理はない。そういったことはあるし、むしろあたしはこの点こそが重要だと考えている。
いずれこの小社を撮ることができ、あるいは今は被写体として「引っかかってこない」もの達も撮れるようになり、やがては「一眼の表現力がないと自分の写真回路を再現することはできない」日が来るかもしれない。しかし、それは多分何年も先のことだろう。だから、一眼はまだいいや、そういう選択もあると思うのだ。