弁財天社
神奈川県座間市
小池の鎮守の弁財天は三月三日を例祭とする。養蚕の神・白髪大明神も併せ祀っている。社地の脇に昔池があって、目久尻川の水源の湧水であった。
古老によれば、池には相模原の大沼の竜神が弁天を恋い慕って通ってきたという。竜神は雨を降らせ、大沼と小池を結ぶ水の道をつくった。それが深堀という堀だったが、これも埋め立てられてしまった。
湧水は小池・栗原だけでなく、海老名・綾瀬・寒川など目久尻川下流域の水田地帯にとって重要だったので、寒川町などは三月三日の祭に欠かさず代表が参拝していた。
『座間市史6 民俗編』(座間市)より要約
追記
小田急相武台前駅の東、住宅街の片隅に今も小池の弁天さんの小社はある(池はもうない)。一帯では養蚕守護の神として、シラカミ様(志ら神などと書く)という女神がよく祀られ、白髪大明神とはそこからの転であると思われる。比叡の白髭神社的なものではない。社殿には蛇が彫りこまれていた。
相模原市南区の「大沼」と深堀なる堀でつながる時があったとあるが、間には米軍住宅地などもできてしまっており、これがどのようなルートであったのかはよく分からない。直線でも一里以上になるので、そこそこの距離がある。
雌雄の竜蛇が出会うために雨を降らせるというのは、相模川の向こう清川村の方の雨乞いにも見える話で、参照しておかれたい(「煤ヶ谷雨乞いの龍」)。大沼と小池はほぼほぼ南北一直線上にあり、ただ堀がつないでいたというだけではなく、神事としての配置であったようにも見える。
また、ここを源とする目久尻川流域の人々が代参を送った、という点も注目される。一段北の式内社・有鹿神社には水源を祀る重要な神事があり(「勝坂の有鹿谷の霊石」)、併せ見ておきたいところである。