弁財天社

原文:神奈川県座間市


小池の鎮守で、祭神は弁財天および白髪大明神の二柱、例祭日は三月三日となっている。祭神の白髪大明神とは養蚕の守護神で、弁財天と相殿の形で祀られている。

社地に隣接する児童遊園地の敷地にはかつて面積三〇㎡ほどの小さな池があり、「小池」と呼ばれていて、小池の字名はここから出たものだといわれている。この池は目久尻川の水源をなすところの湧水源でもあり、周辺の開発が進んで昭和三十年代には水が涸れて埋めたてられてしまったものの、そのほとりに水の神として祀られていたのが弁財天社であった。

古老のいい伝えによれば、当地の弁天様は水を守る女神で、相模原の大沼に住む竜神様がこの女神を恋い慕うようになったという。竜神は空から雨を降らせては大沼と小池を結ぶ水の道を作り、弁天に逢いにきたといわれ、大雨が降るたびに大沼と小池の間に深堀という堀ができるのはそのためであったという。今ではこの深堀も埋め立てられてしまい、さらには小池そのものも跡形なく消えてしまったが、かつてこの小池の湧水は栗原のみならず、海老名・綾瀬・寒川など目久尻川下流域の水田地帯にとってきわめて重要な役割を果し、弁財天社はその恩恵に浴する下流域の人々の信仰を広く集めていた。特に寒川町では村の代表を毎年三月三日の弁財天社の祭に派遣し、欠かさず参拝していたとのことで、そのほかの村々からも灯明料が必ず奉納されていたという。

『座間市史6 民俗編』(座間市)より

追記