子供の寿命

神奈川県川崎市多摩区


諏訪社は安産の神様としても信仰された。ある夜、乞食が拝殿に泊まると、奥の方で神様と召使が話をしていた。曰く、どこそこで男の子が生まれたが、その子は七つで水の災いで命を取られる、という。

乞食は不思議に思って、翌朝その家に行ってみると、確かに男の子が生まれていた。それで、その家の主人に昨夜のことを話しておいた。主人は乞食が何をいうかと思ったが、万が一と用心して、子が七つの年は堀などに落ちぬよう一年付け人をして用心したそうな。

ところが、ある日流しの下の番手桶に水が汲んであり、男の子はその桶に首を突っ込んで死んでしまった。村の人々は不思議なこともあるものだと噂したという。

『川崎物語集 巻二』川崎の民話調査団
(川崎市市民ミュージアム)より要約

追記

このような運定めの話は、その予告を知って注意し禍を避け、逆に長命を得るというものと、このようにどうあがいてもその予告には逆らえなかった、というものとがある(「月読様が口を聞いたと言う話」なども参照)。

前者ではその禍が竜蛇として現れることがままあり(「子どもの寿命」)、師走の川浸り餅の由来となる場合もある。禍が「対処できる相手」にならないといけない、といういい例ではあるだろうか。

長沢の話で興味深いのは、運を告げているのが蛇神の代表格であるところの諏訪社であるというところだ。実際、この社にはお宮を守るべき家を蛇が助けるという話もある(「お諏訪様の白蛇」)。ただ水だから蛇、というイメージを超えて、命数の消長を蛇が示している事例、といえるかもしれない。