由都加波昔し話

神奈川県愛甲郡清川村


湯出川は湧出からユイズル川といい、ユギ川となり昭和十年頃まではユズカワと呼んでいたが 何時の間にかユデ川と呼ぶようになった。川の右岸に湧く鉱泉は風呂に良く、左岸のほうは冷える為に切り傷や眼病に良い。

ところが昭和六十年度の水道工事の発破で湧出が止まってしまった。左岸の湧出はまた天王前・テンノメエの湯といい、その淵には底のほうに人に入れるような穴が岩の切れ目にある。この穴は江の島の弁天様の所までつながっているといわれた。

雨乞いのときに八幡で離される雌雄の龍は、会いたく雨を降らせるといった。龍は蛇かごに麦殻をさし込んでつくられ、村民総出で担がれるが、人々は水を掛けられ、お神酒で酔ってジヤコロシのようにねり歩く。そして雄龍は天王前の淵に納められた。

『清川の伝承』(清川村教育委員会)より要約

追記

湯出川(谷太郎川)の天王前の淵は、引いたように雨乞いの龍が沈められる淵である(「煤ヶ谷村の雨ごい」)が、このように江の島に通じているという話がある。

これは、雨乞いの要所として「なぜこの淵なのか」を語っている話かもしれない。お隣の愛川町のほうには、江の島の弁天さんが穴(水脈)を通って通ってきたという雨乞いの滝がある(「塩川滝の由来」)。雌雄の邂逅、という点からも併せ見たい。