八本目のたこの脚

神奈川県三浦市


三崎の宮川の桶島の磯に大きなたこがいた。捕ろうとしたが、磯に吸いついて離れないので、脚を一本切り取って持っていくと、桶に一杯になった。翌日またそこへ行くと、脚が一本足りないたこがいるので、また脚を一本切り取って桶に入れて帰った。こうして七日まですぎたが、八日目に、残った一本の脚にからみつかれて、桶もろとも、海に引きずりこまれて死んでしまった。

話者 草間甚七 三崎の漁老 当時七十三歳
発表文献 内海・昭和三五

『神奈川県昔話集 第二冊』
(神奈川県教育委員会)より

追記

誰が、というのが書かれていないのだが、周辺類話では、その蛸の足を切る人の欲深さなどを語るものなので(「七桶」など)、異例ではある。近く小網代の方にもこの話があるが、やはり欲の戒めなどにはなっていない。

また、桶島という場所が舞台となっているが、上の葉山の七桶や、長沢の「七桶の里」も、この話ゆえに地名をそういう、となるので、宮川でも同じであったかと思われる。

なお、三崎の田中から宮川というところは、城ヶ島東の安房崎から竜蛇が渡るという場所でもあった(「洲の御前」)。上の長沢の蛸がいた磯も大蛇が造った磯であったが、ここも両者の話の重なる舞台としても記憶したい。