蛇の寄り

神奈川県茅ヶ崎市


イチコのきゅうじさんが埋め立て、上に鳥小屋のあるあの高い所。ある夏、蛇が一匹や二匹でなく、釜敷きの丸い輪っぱのような形になって五、六十匹はいたと思う。全部まかりついて、首だけ出して草の上にいた。

いろいろな種類の蛇が集まって、ひとつの山になり、仲良くしているというか、相談しているというか。昔から蛇の寄りというが、それだ。一生に二度は見ないというが、一度見ただけでもうたくさんだ。(下寺尾 男 明治37年生)

『茅ヶ崎の伝説』
郷土史研究グループ「あしかび」
(茅ヶ崎市教育委員会)より要約

追記

場所のことはよくわからないが、下寺尾ならば寒川との境で、すぐ北には、開墾にあたって多くの蛇を殺したので供養の塚を造ったという「蛇塚」のあった岡田は北隣だ。

蛇が寄り集まったものは蛇こしきなどといって、見ると(入手すると)一生幸運を得るなどといい、相模川の対岸平塚でもそういう(「蛇を見て幸せになる」)。

ところが、上の話ではただ珍しさをいうだけで、運が開けるという気配がない。この話者がたまたまそこを聞かなかっただけなのか、蛇こしきの話が必ずしも幸運の話になるわけではないのか。この一例だけでは何ともいえないが。