蛇を見て幸せになる

神奈川県平塚市


昔は何でも竹藪に捨てたものだが、真土のある家の方がゴミ捨てに行くと、以前捨てられていたイチコという容器の中に蛇がいた。蛇は何十匹もいて、イチコの中に固まっていた。その人が驚いて親に知らせに行って戻ると、もう蛇はいなかった。そういった蛇を見た人は、年がいっても幸せだという。

平塚市史民俗調査報告書6『大野』
(平塚市博物館))より要約

追記

話はおそらく蛇がこしきをつくる、というそれで、各地で蛇こしきを見ると幸運を得るという(「へーびこしき」など)。引いた話には蛇の集まりについて特に名を呼んでいないが、すぐに消えてしまうものだと語るあたりも蛇のこしきの話に同じだ。

近いところでは、大住でも伊勢原市のほうへ行ってもこの類の話がある(「蛇のごしきと蚕」)。そちらでは「五色(ごしき)」と呼ぶほうに転じた例になると思うが、養蚕に関係して語られている。併せ見られたい。

また、蛇が中にいたイチコというのは市籠と書き、いじこなどとも呼ぶが、ようするに「えじこ(嬰児籠)」のこと。えじこは乳幼児を入れておく藁などで編まれた籠のことだ。

えじこには、昔は藁縄にとぐろを巻かせて作ったようなものがある。さらにその呼び名の流れから、それそのものに蛇を暗示したところがないか、という疑いがある。「浅生のつぶら池」などから、その話題にもあたられたい。上の話だけでは、イチコが蛇を暗示しているとまではいえないが、えじこのことを「こしき」と呼ぶ土地もある。