蛇の寄り

原文:神奈川県茅ヶ崎市


蛇の寄りだ、へえんだな。

場所はイチコのきゅうじさんが埋めたてした、上っかに鳥小屋があって、道がふさがってるけんど、あすこの高い所。

わたしの若いころで夏だった。蛇が一匹や二匹ではない。まるみっていうか、釜敷きの丸い輪っぱのようなもののかたちに蛇が五十匹や六十匹は、いたと思う。

全部まかりついちゃって、首だけ出して、草の上にいる。やまっかがしもいれば、いろいろな種類が集まってひとつの山になっている。仲良くしているっていうのか、相談しているっていうのか、寄りっていうのか、昔から、蛇の寄りって言葉はあるけど、これだよ。寄りってのはよお。おばあちゃんと一緒に草むしりに行ったときで、
「うわあ、すげえっ。」
ってわけさ。一生に二度と見れねえと。一ぺん見ただけで、もうたくさんだ。(下寺尾 臼井勇さん 明治37年生 昭和55年6月)

『茅ヶ崎の伝説』
郷土史研究グループ「あしかび」
(茅ヶ崎市教育委員会)より

追記