ムジナ穴の大蛇

神奈川県相模原市緑区


藤野駅の上の山に夫婦岩があり、岩には八畳敷くらいのムジナ穴と呼ばれる穴があった。ある春、このムジナ穴に入った人が大蛇を見た。棒か丸太かと思ったら、コケが射し込む夕陽に光り、動き出したので大蛇とわかった。

その人はどうにか知人が畑仕事をしているところまで逃げてきたが、いく日も経たずに死んでしまった。他にも数人蛇を見たものがいるが、息を吹きかけられると死ぬといわれていた。

『藤野物語 老人大学調査集録』
(藤野町教育委員会社会教育係)より要約

追記

夫婦岩、ムジナ穴が現在あるのかどうかは不明。その藤野駅北に下りてくる尾根を登っていくと鷹取山に行くが、そちらでも大蛇が見られ、やはり障ったという(「鷹取山の大蛇」)。

ところで、こういった世間話に出てくる「大蛇」がどういうものなのか、日常に見る蛇のただ大きなイメージなのか、というところには少し注意がいる。明らかにそうではなかった、と語るものもあるのだ(「浦山の竜蛇」など)。そこは思い込まないでおきたい。