ムジナ穴の大蛇

原文:神奈川県相模原市緑区


今の藤野駅の上の山に夫婦岩があり、その岩にムジナ穴と呼ばれる八畳敷きぐらいの広さの穴があった。Kさんが春、フキ抜きに行ってムジナ穴に入ってみた。棒かなあ丸太かなあと思ってみると、夕陽がさしこんでコケがキラキラ光っている。そのうち動き出した。よく見たら蛇で、すぐ逃げることはできない。一尺さがり、二尺さがり、三尺さがって、六尺ぐらいさがって夢中で逃げてTさんが畑をうなっているところまできた。話できずにいると、「おめい何をしただ。」とTが言った。Kは、「ムジナ穴に大蛇が……」と言った。そのせいかもしれないが、Kさんはそれからいく日もたたないで死んでしまった。他の人三、四人もこの蛇を見た人は、その息を吹きかけられると死ぬと言われていた。

(この資料は、各話タイトルはないので題は独自に付した)

『藤野物語 老人大学調査集録』
(藤野町教育委員会社会教育係)より

追記