昔、田治ヶ岡に安達太郎という殿様がいた。ある日、天から舞いおりた天女の美しさに心をひかれ、天女の羽衣を奪って館に引き入れ、無理に夫婦の契りを結んでしまった。天女は毎日泣きながら、機を織っていたがそのうちに一人の女の子が生まれた。その子が五歳の時、ついに羽衣の在りかをつきとめたので、我が子を一室に呼び入れて、機の杼を渡し、ここから北の方角にこれを祀り、母と思ってお参りせよと言い残し、泣き呼ぶ我が子に別れを告げ、羽衣を身につけて天に上った。太郎は娘からこのことを聞き、北の方の山にこれを祀り機織り御前と名付け、女の守り神として、村内はもちろん、近村の信仰を集めた。