清徳寺の鎌獅子の雨乞い

神奈川県愛甲郡愛川町


清徳寺の鎌獅子宮に祀られている獅子頭は、かつては雨乞い祈願の行道をする呪具であった。鎌獅子の名の由来は、下顎がないことによる。昔この獅子が行道をすると、三増中の水を飲み干してしまうので、下顎を外して旱魃が起こらぬようにしたのだそうな。それ以来、雨乞いの呪具となったのだという。

『愛川町郷土誌』愛川町教育委員会
(愛川町)より要約

追記

この獅子頭は今も清徳寺にあるようだが、かつて行道をした頃に、嚮導役はバンバ面という嫗の面をつけたといい、その面も残る。周辺地域に見える夫婦の引き合いをもって雨乞いとした信仰の一環であったかもしれない。

獅子頭は色々の地域で雨乞いの呪具となっている。それを身につけ、蓑を着た姿を竜蛇と見る場合もある。(この三増の鎌獅子は違うが)殊に、東北の鹿踊りの系統の獅子頭は、竜であると明言される場合もある(「八幡さまの神獅子舞い」)。

しかし、それがかつて水を飲み干す獅子であった、というのはどういうことだろうか。それほど水を欲するものに水を飲ませなくしたので、雨を降らせる、ということか。ただ、恐らく意味合いは異なるが、竜蛇にも水を飲み干してしまうという話はある(「竜の頭と竜の尾塚」)。