箱根山の雨乞い

神奈川県足柄上郡中井町


大久保では雨乞いに箱根権現に水をもらいに行った。もらった帰りにどこかで休憩するとそこに雨が降ってしまうので、二人で行って、交代で休憩したという。

三升入れの御櫃に赤飯(おこわ)を入れて箱根に行き、まず権現さんに赤飯をあげて、そこから舟に乗って湖の中に御櫃のまま赤飯を沈め、浮いた御櫃を持ち帰った。

水を持ち帰ると、水神さんにあげ、皆で少しずつ飲み、そのあと笹の葉で村の辻々に撒いた。「大雨立った、水立った。」と大声で唱えながら、通行人にまで水を振りかけた。(田中、曾我騰氏談)

『中井町誌』中井町誌編纂委員会
(中井町)より要約

追記

お隣の半分形(字)ではお天気念仏(晴れ乞い)が盛んだったといい、真逆なのが面白い。この資料では、隣地でも、大久保が砂礫層で照りに弱く、半分形はローム層でしけに弱かったからだろう、と述べている。

ともあれ、このような雨乞いが行われていたことは注目に値する。箱根九頭龍に雨を乞う講は西相模や駿河駿東地域に多くあったが、赤飯を持って行って沈めていた、という話が語られている点は貴重だ。

南足柄市の「清左衛門地獄」のような話も、こういった雨乞いがあったが故のものか、と思わされる。さらに、竜蛇の湖沼に赤飯を沈める儀は各地にあるが、その周辺にも似たようなことがなかったか、という視点ともなる。