黄金の雨

神奈川県南足柄市


ある男が大だな小だなという所で薪を集めた。さて、帰ろうと足元を見ると、太い枝が落ちている。男がこれも鋸で挽いて帰ろうとすると、何と枝と思ったのは大蛇の胴だった。大蛇は男を睨むと、どこかへ這って消えた。

男は這う這うの体で逃げ帰り、板屋長者に次第を話した。長者はそれは山の主に違いない、といいお坊さんに頼んで、大だな小だなの滝の近くで七日七晩お経をあげてもらった。

すると、にわかに空が暗くなり、大蛇が唸り声をあげて天に昇った。その時、雨に混じって落ちてくるものがあり、それは黄金の鱗であったという。

『語りつごうふるさとの民話』
(小田原青年会議所)より要約

追記

長泉院には大蛇や悪犬が出てくる「長泉院来由記」(リンク先は部分)があるが、この話はない。そもそも「来由記」によるなら、長者がいたのは寺のできるはるか以前のことでもある。

しかし、だからこそ、この昔話も確かに語られていたのかもしれない、とも思う。近現代の人が昔話を作ろうとしたら「来由記」と矛盾が出ないように作るだろうから、上のような混乱がある筋というのはかえってそれらしくはある。

もっとも、この話は他に見ず、引いた以上のことは全くわからない。そもそも山の主が大蛇というなら、大森氏を助けた地主の神(長泉院の守護神)との関係も重要となるのだが、現状手詰まりとなる。