しょうぶ湯
神奈川県茅ヶ崎市
五月四日の宵節供と五日に、二回しょうぶ湯に入る。昔、ある家が女中を置いたが、いい女で、蛇が目をくれて男になって通ってきた。
それで、蛇の仲間が首尾を聞いて、通った蛇が、たねをおろしたが、しょうぶ湯に入られたらだめだ、と話しているのが聞かれた。それでしょうぶ湯がはじまったのだ。(下寺尾 女 明治35年生)
『茅ヶ崎の伝説』
郷土史研究グループ「あしかび」
(茅ヶ崎市教育委員会)より要約
追記
上の話は蛇聟による菖蒲湯の由来としては欠けているところが多い。正体を確かめるため追う方法、そこで立ち聞きする様子、しょうぶ湯の目的が子を堕ろすことであること、などが語られていない。
茅ヶ崎には芹沢のほうに、そのあたりも語った類話がある(「菖蒲湯」)。そこに加えて上の話をあげたのは、同下寺尾でもう一方の菖蒲の魔除けの話が語られているからだ。
菖蒲の魔除けの由来には、人の男の所に蛇の女がやってくる食わず女房タイプの話があるのだ(「五月節供としょうぶ」)。それが同じ地域で語られたというのは面白いだろう。