蛇のこもる蛇塚

神奈川県茅ヶ崎市


保健所のわきの県道の西、矢畑分に入ると思いますけれど、こんもり島みたいに見えた塚がありました。蛇塚といっていましたね。冬になると蛇が田んぼから出て、そこにこもる。塚には穴があいていて、そこにみんなひっこんじゃうんですね。昔は、そこの蛇をいたずらすると、あれは主だからわざわいするといって、塚には子供を寄せつけなかった。(下町屋 吉田登女子さん 大正8年生 昭和55年6月)

『茅ヶ崎の伝説』
郷土史研究グループ「あしかび」
(茅ヶ崎市教育委員会)より

追記

原題は単に蛇塚だが、同名の類話が並んでしまうので変えた。本社塚と丑の御前を行き来していた大蛇の塚(「蛇塚」)と同じ塚と思われる(塚はもうない)。そちらではおとなしい大蛇となっていたが、上の話では「わざわいする」と語られている。

市史には「蔵屋敷にいたという大蛇を埋けたところといわれる」とあるので、語る土地によってまちまちなところがあるのかもしれない。また、障るということでは、大蛇の行く先だったという本社塚のほうの話も見ておきたい。

本社塚(本社宮跡という塚)にあった大松を切ったところ、中にいた蛇のためか祟りがあったというのだ(「死にきれ」)。この話が一緒になって語られているのかもしれない。もっとも、それが同一の蛇だというなら、そもそも同一の話といっても良いだろうが。