通いあった大蛇

神奈川県藤沢市


この川(一色川)を大蛇が行き来したですよ。

稲荷というところに、いま老人センターがあるでしょ。あのこっちかわに、溜池が二つあったですよ。それで、こっちに、石川と円行の境に、大口といってね、そこにさむしいところがあってね、大蛇が毎晩行き来したですよ、この川を。蛇が行ったり来たり、この川をね。夫婦だろうね、どっちかに棲んでいて、おたがいに通うわけだ。

そういう話は、よく聞いたね。見たって人があるんだから。(石川 秋本貢氏 明治25年生・昭和50年4月)

『藤沢の民話 第三集』
(藤沢市教育文化研究所)より

追記

高座地域には、海老名市の式内社・有鹿神社の水引祭(「勝坂の有鹿谷の霊石」)を皮切りに、土地が必要とする水の来る先との間を蛇が移動する。水が足りている様子が、蛇が行き来する様子ということだろう。

これは端的には、西相模になるが清川村のほうの雨乞いの話(「煤ヶ谷村の雨ごい」)、すなわち離された夫婦の竜が行き会うために雨を降らせるというような感覚になるのだろうと思う。