片目のどじょう

神奈川県藤沢市


昔から、広田さんの他の中にいるドジョウは眼が片っぽないといった。今はもう畑になって植木が植わっているが。嘘じゃなくて、まだ田んぼの時分、そこのドジョウを取ると、本当に片目だった。

お舅さんからは、それは鎌倉権五郎景政という人が、眼にあたった矢を抜いて、そこで目を洗ったからドジョウの眼が片っぽないのだといわれた。(宮前 女 明治40年生)

『藤沢の民話 第一集』
(藤沢市教育文化研究所)より要約

追記

近くには古館の森という木立があり、今の古館橋が移る前にあったところで、いろいろの話がある(「ザアザア」など)。古館とはその景政の館のあった場所、その末裔の家々のあった土地の意であるという。

宮前とは景政を祀る御霊神社(今も土地の鎮守)の宮の前であり、神社にはまた抜いた矢をさしたら根付いた矢竹という竹林やその由来を語る矢竹稲荷などもある。

殊に東国においては片目の伝説の主役は景政になるが、その本貫地がこことなる。余談だが、現地を歩いていたところ、なんと鳥海の家がそこにあって驚いたものだった。