片目のどじょう

原文:神奈川県藤沢市


むかしからね、広田三郎さんの田の中にいるドジョウが、眼が片っぽないっていったんですよ。いまでは、そこも畑にしちゃって、植木が植わっていますけど。

うそじゃなくて、まだ田んぼの時分、あそこのドジョウを取ると眼が片っぽないんですよね。ほんとなんですよ。

「あすこのドジョウをすくってみな。あすこのは眼が片っぽないんだから」って、よくお舅さんがおっしゃった。

「それはね、鎌倉権五郎景政という人が、眼にあたった矢を抜いて、そこで眼を洗ったからね、そこのドジョウは眼が片っぽないんだよ」って。(宮前 林うらさん 明治29年生・昭和47年10月)

『藤沢の民話 第一集』
(藤沢市教育文化研究所)より

追記