大鐘まつり

神奈川県鎌倉市


円覚寺の大鐘まつりは六十一年目毎に盛大に行われる。これは出合い祭で、江の島の弁天様が来るという。円覚寺の弁天が男で、江の島は女という。

祭の日は鎌倉街道は大賑わいになった。大鐘をひくときは赤と白の三角帽子をかぶり、世話役は鐘という紋の入ったトーザンの紫や青の羽織を着る。大鐘祭に二回出会う人はいない。

『鎌倉の民俗』大藤ゆき
(かまくら春秋社)より要約

追記

円覚寺の大鐘・洪鐘(おおがね)は貞時を大旦那とする国宝の鐘だが、頼まれた物部国光はうまく鋳造できず、江の島弁天に七日七夜参籠し、成功したものという。それで、円覚寺の洪鐘の横には弁天堂があり、こういった祭がある。

円覚寺の開山・無学祖元禅師は鶴岡八幡の守護を受けて宋より鎌倉に来たというが(「龍と鳩」)、その船を護った龍が棲む宿龍池が山内にあった(今は碑のみ)。国光は江の島参籠のあと、その宿龍池から金銅を得て洪鐘を鋳たという(『新編相模国風土記稿』)。

因みにこれにより「江島より石像蛇形の弁財天を洪鐘の真体として鐘楼の傍に勧請し洪鐘大弁功徳天と号」したのだそうな(同新編風土記)。鐘の真体が蛇身だと明言している重要な事例でもある。