江島弁天と大師さま

神奈川県鎌倉市


江の島弁天様も龍である。昔大師様が、手広の青蓮寺に来て、池で行をして居られた処に、この龍がいた。行をしながら大師様は龍の居ることを知って居られたが、青臭い匂いがしていられないので、
「お前が居ると困るからわきへ行ってくれ」と龍に云われた。龍の弁天様は、
「行ってくれと云われても居る場所がない」という。

「それなら行く所をみつけてやるから引越してくれ」といって、大師様は江の島の岩穴を見に来られた。ちょうどいい穴があるからというのでそこへ行って住んでくれということで、それから弁天様は岩穴へ移られた。(『わが住む里』)

『藤沢の民話(文献資料)』
(藤沢市教育文化研究所)より

追記

青蓮寺のほうの話では、弘法大師の護摩行を天女(江の島の弁天)が助け、江の島に招いたという話になっている(「鎖大師」)。上の話とは随分雰囲気が違うといえる。

こちらの話では、大雑把にいえば、江の島弁天の元地がここだということになる。寺の歴史にそのようなところがあるのか分らないが、興味深くはある。

江の島のほうの縁起でいう五頭竜がいたというのは手広から南西にあったとある湖であり(「江島縁起・五頭竜と弁才天」)、何かの縁故はあったのだろうか、とも思う。