赤穂馬大通寺の昔話

神奈川県相模原市緑区


昔、赤穂馬の大通寺に甲州御嶽へ行くという旅人の娘が来て、一夜の宿を頼んだ。住職は断ったが、どうしても泊めてくれというので本堂に寝かせたが、住職は夜中にものすごい鼾を聞いて目を覚ました。

そして本堂を覗くと、娘の姿はなく、大蛇がとぐろを巻いて寝ているのだった。住職が驚いて夜の明けるのを待っていると、大蛇は朝になると娘の姿に化け、裏の井戸で洗面をして立ち去ったそうな。

このときの井戸を大蛇の井戸といった。大通寺は甲州の貧乏寺として知られたこともあったが、寺脇に大きな穴があって、通行人や荷車が落ちたことから、貧乏になぞらえられたのだろうともいう。

『津久井の昔話 第三集』
(津久井福祉事務所)より要約

追記

赤穂馬は現在「赤馬(あこうま)」と書かれる地区のこと(千木良地内)。大通寺は一応今もあるが、お堂というところのようだ。話の大蛇の井戸の現在は不明。

甲州御嶽というのは甲府市の金櫻神社のことだろうが、なぜ蛇がそこへ向かうのかがわからない。というよりも、どこの蛇が向かったのかもわからない。四国のように娘姿の蛇の去来が家の盛衰を語る土地柄というのでもない。

高尾山のほうにはケーブルカーの時代になっても移動した弁天さんの話があるし(「雨寶辨天橋とケーブルカー」)、富士五湖のほうでは弁天さんがタクシーにも乗っているので、このあたりで移動するなら弁天さんだと思うが、不明。

少し気になる件としては、向きが逆になるが赤馬の西になる(甲州御嶽に向かう先になる)宿地区に、竜が昇降した御嶽祠があったという話がある(「上り竜下り竜」)。ただ、これもどこの御嶽さんなのか不明。