おひの森の大ひのきの話

神奈川県相模原市緑区


以前相原に「おひの森」という所があり、相模で三指に入るという檜があった。「おひのき」と呼ばれたその檜は、枝を折るだけでも祟ると恐れられ、人が近寄らなかった。ところが、ある年の台風で大きな枝が折れ、皆の心配の通りに病が流行った。

それで皆で三七二十一日の厄除け祈願を一心に行ったところ、満願の夜明けに天地も崩れんばかりの雷光があり、大檜に落雷した。さすがの大木も一瞬で焼け落ちたが、残った根の空洞からは、大蛇の白骨が見つかったそうな。「おひのき」の主が運命を共にしたものと、皆は改めて白骨を祀ったという。

『増補改訂版 相模原民話伝説集』
座間美都治(私家版)より要約

追記

おひの森は旧住所で相原二八六番地となるそうだが、現状は不明。相模原市には田名のほうにも「オヒノモリ」があり(現存・晴れ乞いが行われたという)、どうもこのような名の祭場を好んだらしくある。

話の方は、祟ったのが檜なのか大蛇なのかというところだが、いずれ同体という印象ではある。大山の方に禍を起こす寸前の大木の大蛇を石尊の火が焼く話があるが(「大蛇ノ燒死シタル事」)、近いものといえるだろう。