水神様の雨乞い

神奈川県相模原市緑区


昭和のはじめ、猛暑が襲い、水神様に雨乞いをすることになった。水神様にある渕には江の島の弁天様に通じるエゴ(横穴)があり、二尋も三尋もある〝ぬし〟がいると恐れられ、一人で泳ぐ者もなかったが、是非もなかった。

吉原集落の下、秋山川の名勝でもある水神渕に十数集落総出で雨乞い祈願と相成り、老若男女大騒ぎの末、感極まって泳げぬのに川に飛び込むものもあったが、霊験は数日後あらたかだったと聞く。

『むかし むかし』(藤野町広報委員会)より要約

追記

すでに土砂が流れ込んで深さは失ったようだが、水神の渕は今も名勝として知られる。竜蛇とはいっていないが「二尋も三尋もある〝ぬし〟」ならば、大蛇か大鰻だろう。江の島と通じるというならなおさら蛇である。

取り立てて特筆するところのある話ではないが、この周辺にはこのように「江の島に通じる」という感覚が見えることから(「由都加波昔し話」など)、その事例として引いた。