山田の妙見様

神奈川県横浜市港北区


新羽は昔は大変な山の中で、大蛇(オロチ)がいたという話が多い。下田さんも、新羽の池ノ谷の池で大蛇が泳いでいるのを見て逃げたそうである。山田の妙見様は大蛇を祀ったものなので、10月3日の祭にはよく雨が降るといい、この辺の人達は「ヤマタのオロチ」と呼んでいたという。天保生まれのおばあさんは、北の杉山社の上の原で大蛇がお供の中くらいの蛇を10匹程引き連れ、悠然と原を渡って行くのを見たそうだ。しかし、板倉さんにいわせると「この辺のオロチが人を飲んだという話は聞かないから、大きいといってもまだたいしたことはない」という。人を飲むオロチがいるのは当然という口振りである。

(※下田・板倉は当時87歳・78歳だった北ノ谷の長老)

『新羽史』新羽史編集委員会より

追記

新羽(にっぱ)町は港北区で、山田神社は都筑区となるのだが、端から数えれば二キロくらいだろうか。はたして妙見さまが蛇だということなのかどうか。そういう事例もないではない(「喜多川神社のおはなし」)。

ただし、山田(やまた)のほうでは妙見さんとしては亀を非常に尊ぶ風であって、山田妙見が蛇だとはいわない。当社に東山田の鎮守であった諏訪社が合祀されており、そちらに絡んで蛇の話が出る(「妙見山の神池」)。

これは山田の外から見て、山田ならば「やまたのおろち」だろうという話となった例ではないかと思われる。山田という地名はとかく蛇の話を呼ぶのだ(「山田神社の蛇石さん」など)。

また、杉山社のほうに大蛇の話が見えているのも覚えておきたい。これも杉山社であることが必然なのか胡乱だが、杉山神社にも蛇の話がついて回る可能性が出てきている(「杉山神社跡」)。