元橋のおんじ

東京都江戸川区


東小松川村の熱田のあたりの境川(区民センター付近)に、元橋という橋がかかっていました。半間ほどの土橋で、丸太をくんでその上に土を盛り、芝生などが植えてありました。

この土橋のそばに、大蛇が住んでいて、土地の人たちは「元橋のおんじ」といって恐れていました。子どもたちはこわくてその橋には近よらなかったものです。(東小松川村)

『江戸川区の民俗 3』(江戸川区教育委員会)より

追記

元橋というのはわからないが、新小岩駅の南になる親水公園のあたりだろうか。そこの大蛇もまた「おんじ」であったという。大蛇を「おじ」と呼ぶ風が越後の方にあり(「鵜ノ子の主」など)、東京周辺千住あたりにもある。そしてこうして江戸川区に入ってもある。

千住のほうの話というのは「槇の屋のおぢ」といって、これもそういう大蛇がいたというほどの話だが、『足立百の語り伝え』にはその槙の屋の大蛇を「おじん」と書いてあった(「牧の野のおじん」・内容はほぼ同じ)。

ただ「おじ」というと大蛇・男蛇(おおじゃ・おじゃ)からかとも思えるが、「おんじ・おじん」であるとより叔父・弟の意が強いといえる。