蛇の祟りの土地

東京都大田区


何十年も前、大森に来て住んだ人があったが、その家に客に来るだけでその人の家族が次々具合が悪くなるというようなことがあった。息子も病気して、娘も悪くなり死に、しまいには皆亡くなってしまった。

そこは昔房州へ米を持っていく米倉だったが、米を運ばなくなって倉も朽ち、壊した。冬だったが、カツギショウギ二杯もの蛇がいたという。それを土台など燃やすときに一緒に燃やしてしまった。その蛇の祟りがある土地に家を建てたので、人死になど出るのだろうと噂になった。

『口承文芸(昔話・世間話・伝説)』
(大田区教育委員会)より要約

追記

周辺には蔵に蛇が棲みつくという話が多く、それを粗末にしたがためたたられ家が傾く、とよく語られる(「蔵の蛇の祟り」など)。しかし、上の話では殺された蛇の祟りが土地を忌地にしている。

執念深さといえば蛇の代名詞のようなものなので、このような話がさぞ各地にあるだろうと思うが、存外に聞かぬ筋である。大概は蛇を殺した家、その末裔に祟る範囲で話が終わるものだ。

大森周辺は蛇が稲荷と祀られる事例がままあり、そこには一家をこえて祟りが続く土壌があるかもしれない(「白蛇の神」など)。その変化が見える土地だとしたら、よくよく検討を重ねる必要のあるところだといえる。