箕作は天城山への道で、今の県道も古くからのその小路に基づいて作られた。龍巣院の門側に山口神社という小祠がある。この寺には小筐に密封されて秘蔵されている乾龍があるが、この龍がかつて土地を苦しめた毒龍であった。
寺地と稲生沢川の間に大きな古池があって、そこに毒龍が棲み人畜を害し田畑を荒らした。人々は大いに恐れ困ったが、たまたま巡錫された最勝院の吾宝禅師が、この苦しみを除かんと、大悲心を起して留錫された。
禅師の朝暮の神呪の読誦により、池水は次第に涸れ、毒龍も寸小に縮まって、池の中で乾死したという。人々はことごとく安堵して、禅師を信仰して一寺を建立した。これが龍巣院である。池のあとは池田と呼ばれている。
乾龍は寺宝となって、旱魃のときは稲生沢川の川上妙善淵というところに持ち出されて雨乞いが行われた。必ず降雨の霊験があったという。