ツバメの土産 群馬県前橋市 あるうちに、ツバメが毎年来ていた。 ある日のこと、おばあさんがツバメに、 「おめえはまい年よくおらあちへ来るが、たまには土産を持って来ぉ」 っていったって。 そしたら、そのあときて、台所にかぼちゃをおとしたって。 みたら、それがかぼちゃのたねではなく、ヘビのたまごだったって。 ヘビがでて、そのうちはへび屋敷になったって。 南の国はヘビが育たないので、たまごを、北の国へもってくる。日本へは子を育てにくるのだという。(天川大島) 前橋市民俗文化財調査報告書第三集『前橋南部の民俗 上川淵・下川淵・旧木瀬地区』(前橋市教育委員会) 太田のほうでこの燕の土産の話が重ねて語られる(「蛇川の由来」など)。それが前橋のほうにも見える、ということで、一県でこの話が複数あること自体まれだと思うが、この天川大島の話には興味深いところがある。 「南の国はヘビが育たないので、たまごを、北の国へもってくる。日本へは子を育てにくるのだという」という最後の一文がそうだ。この話は各地で、あくまで燕が持ってくる物が蛇、という関係なのだが、ここでは蛇の意向で北の日本へ来ているのだ、といっていることになる。 この蛇が禍なのか福なのかは以上の話からは判然としないが、それが福であったという話は上総のほうに見える(「つばめの恩がえし」)。話の舞台の世間には常にないものが持ち込まれる、という感覚は同じだ。 ツイート