昔、成就寺は蛇の巣と言われるほどで、村の人たちがマムシに咬まれたりで大変困っていた。何代目かの和尚さんのときの話。成就寺にはツバメがよく来、その春も本堂の軒に巣をかけたが、糞のために和尚さんは困っていた。そこで、和尚さんはツバメに、来年も来るなら本尊様にお礼をしなさい、とこんこんと説いた。
明くる年、また春になってやってきたツバメたちの一羽が和尚さんの肩にとまり、見慣れないケシツブのようなものをくれた。本当に礼の土産を持ってきたのかと和尚さんは感心し、南国の珍しい花でも咲くのだろうと境内に播いた。
ところがふた月たっても芽も出ないので和尚さんが掘り返してみると、糸屑でもくるめたような蛇の子がウヨウヨしていた。お礼かと思っていた和尚さんは大変がっかりして、ひどいツバメだと腹を立てた。
しかし、不思議なことに、それから成就寺の蛇に咬まれたという人が出なくなった。その蛇の子は、南国の人を咬まない蛇の子で、ツバメは成就寺の悪い蛇の種を絶やすべくその蛇の子を持ち帰ったのだった。
事の真相を知った和尚さんは、ツバメの行為に感激し、腹を立てた自分を反省し、ご本尊様にツバメのことを申し上げた。そして、お経を唱えてツバメの功徳を讃え、同時に駆逐された悪いマムシたちの供養も行った。