姿を隠して村人を襲ううわばみが出て、手足を喰い千切られる者もあり、村は大変な難儀をしていた。それを新倉が何とかしようと思い、家の宝刀を使うことにした。新倉は、夜明けを待ちかね、寺の前の道を戸ノ内のほうへ行ったり来たりした。
やがて巳の刻となるころ、浅川が道に近づくあたりで、腰の宝刀がカチカチと音を立てた。新倉が何かと思って見回すが何もいないが、宝刀はさらに激しく鳴り、手をかけると勝手に抜き出て、日の光をまばゆく辺りに反射させた。そして、この光に驚いたうわばみが、消していた姿を現したのである。
これを見た新倉は素早く刀を横に払い、うわばみの首が空高く舞い上がった。その首は、向かいの山に飛び、夢中だった新倉が我に返ると、首のないうわばみの胴体が横たわっていたという。新倉は村人に見せないために、急いで穴を掘って胴を埋めた。
宝刀はより一層大切な家宝とされたというが、今はどこに残っているのかわからないそうな。また、うわばみの飛んで行った山は今もうわばみ山と呼ばれ、新倉の墓と思われる石碑もあるという。