地蔵ガ淵のとげぼう

神奈川県高座郡寒川町


おふくろは浜の方だから、なんとかの淵があってカッパがよく化けたという話をしてくれた。小出川の地蔵ガ淵(茅ヶ崎市浜之郷萩園付近)で、大きいウナギが獲れたので焼いて食べようとした。「地蔵ガ淵のとげぼう」といったら、つながって逃げていってしまった。(田端 男 明治41)

寒川町史調査報告書3
『はなし・ことば・あそび・うた』
寒川町史編集委員会(寒川町)より

追記

藤沢・茅ヶ崎のほうでもよく語られた話。肝心の地蔵ガ淵がどこであったかという問題があったが、上では萩園あたりだとある。また、茅ヶ崎の話では、呼ばれる名が「とね坊」となりもする(「物いうウナギ」)。

この話は「物言う魚」の典型ではあるのだが、藤沢の方で語られたもので「だからこのウナギは地蔵だ」というものがある(「地蔵が淵の鰻」)。それが何を意味するのか不明なのだが、寒川には近くに少し気になる話がある。

同じく田端で語られたもので、藤の木から出た蛇の骨を祀った地蔵があったのだという(「蛇の骨」)。あるいはナガモノをそのように捉える風があったのかもしれないので、このあたりのつながりは覚えておきたい。