峰山の大池

原文:神奈川県三浦郡葉山町


下山口八九六

大池は大楠山系の西端、大崩れに近い丘陵峰山(三根山)の山頂中央部にある。地質学上の〝破砕帯〟という不安定な地盤であったが漏水せず、人工を加えず出来た自然池である。一〇年前頃までは水深凡五〜六メートル、直径五〇メートル程あった。

往時は〝底なし沼〟といわれ、赤牛が池の主で晴れた日にはうずくまる姿がのぞかれたという伝説があり、地元の人々は無気味のため近寄らなかったという。

近年急速に減水したので、今のままだと数年にして枯渇するかも知れない。

この池は山上にあるため帰化動物アメリカザリガニ等の侵入もなく三浦半島古来の生物相を保つ貴重な環境である。また池中に生えるオギ、ウキヤガラ等の群生も珍らしい。

東側の一段高い所に成因を同じくした〝小池〟と呼ばれる自然池があったがすでに完全に陸化してしまった。

峰山の高台に昔尾が島に尻尾を現わした大蛇が棲んでいたという言い伝えがある。

『葉山町郷土史』高梨炳
(葉山町)より

追記