お瀧の堰

原文:神奈川県綾瀬市


(お瀧の堰に大蛇がいたって話はありますか。)

いた。あるんですわ、大蛇がね、そこにいてね。下にえらい洞窟があってね、その洞窟の中にやっぱり大蛇が住んでおって、江の島の、その洞窟が、岩屋に抜けていたという、いい伝えがあってね。だからすごかったんですよ、目久尻川が整理になる前はもう、おっかないとこでね。すごく暗やんでて、広い場所が見渡すかぎりのとこが目久尻川の水が落ちててね、堰のとこにね。それで椎の木だの、樫の木がおっかぶさってね、それこそ昼間でも気持ち悪いような所だったんですわ。そこに住んでおって、夜なんと、千手観音の今、清水寺っていいますけど、あそこに松が、今松喰い虫で枯れちゃったけどね、あの松へ龍がのぼってその龍が明かりをつけたという伝説があって。今その松が龍頭の松ってね、その碑が残ってますよ。ええ。あの話は私は直接聞いたんですからね。お瀧堰っていってね、小園用水の水がそこからずっと、目久尻の本流とそれからその上に堰がありましてね、産川堰ってのね、産川堰の水を合流して、それから小園用水へ持って来て、それから望地と小園の田んぼの耕作やったんですよ。ええ。

(その蛇は何か悪さをするとかそういう話なんですか。)

松の木の大木へあがってね、夜明かりをつけると。その明かりをこんだね、向こうの相模湾で漁をしている漁師がね、その、夜目標を失って、その明かりを目当てに帰って来たという、そういう伝説もあるんですわ。(明かりをつけたのは?)その、だから大蛇がね、大蛇が木にのぼってってね、それで明かりをつけた。そういう話を聞いてるんですよ。(大正四年生 男)

『小園の民俗』(綾瀬市)より

追記