大蛇の話

神奈川県伊勢原市


お爺さんがね、昔は大山講って、夏、毎年大山へ参詣に行くんだよな。そいでもう1人のお爺さんが、きのこを採りに行こうかって、一緒に山へ入ったんだな。ところがね、そのお爺さんが急な斜面からころげ落ちたっていうんだよな、どうしたって言ったら、震えちゃってるんだってさ。その草むらんとこへ大蛇がね、大山に大蛇がおったっていうんだな、それが、鎌首を上げてさ、それを見てびっくりしてごろがり落ちたって、そいでお爺さんが、大山には大蛇がいるって言うのを聞いたことがあるね。

『伊勢原の民俗 比々多地区』
伊勢原市史編集委員会(伊勢原市)より

追記

相州大山の大蛇の話。大山は雨降山といって、相模の雨乞い本尊として箱根と双璧をなす存在であり、当然竜神の性格を持っているのだが、山自体には大型竜蛇伝説はない。周囲を見渡しても最も目立つ錐形の山容で、丹沢山塊の端山でもあるのだが。

上の話はただ大きな蛇に驚いた、というほどのもので怪異譚ともいえないだろうが、そのような大山の蛇の話としては丹念に集めたいもののうちといえる。このような大蛇が大木に巣食ったりするわけだ(「大蛇ノ燒死シタル事」など)。