古澤山龍栖寺

原文:神奈川県厚木市


字下古澤の奥俗塵を離れた境に龍栖寺がある。三百五十七坪の境内に間口六間奥行五間の本堂と間口二間半奥行七間半の庫裡とがある。抑も此の寺は本郡荻野村松石寺の末寺で曹洞宗に属してゐる本尊は釋迦牟尼佛である。寺傳によれば寶徳二年七月十一日大綱明宗禪師の開庵で、禪師が茲に錫を留めて毒龍を化度したと云ふので龍栖庵と名けたものである其の後一時衰廢に歸したが、元文年間地頭板倉新次郎が村内に住居して附近の荒地を鎭めて小院一宇を創立して隣村荻野村松石寺五代洞庵和尚を開山として板倉新次郎を開基とし法名を龍栖院殿桐雲秋晤居士といふ。其の後五代通山和尚の代慶安二年八月二十四日幕府朱印地十石を下附した。文化年中火災に遭って燒失した。弘化年中再び野火で燒失した現在の建物は嘉永二年再建のものである。

『愛甲郡制誌』(愛甲郡教育会)より

追記