へびになった弁天様

原文:神奈川県厚木市


むかし、上依知村の東を流れる相模川のふちに小さな祠の弁天様がおられ上依知村の人たちにたいそう大事にされていました。

それというのもわけがあるのです。

ここの村の人たちはかいこを育て、大きなまっ白いまゆ玉を作りそれを売って生活していました。

しかし、かいこがまゆ玉を作るころになると、いたずらネズミがいっぱい出てきて、まゆ玉を食べてしまうのです。

「ゆうべ出てきてのう、だいぶやられてしまったわい。」
「もう出たかやぁ。毎年のことじゃがなんとかならんもんかのう。」
こんな話があちこちで聞かれました。

村の人たちはあれやこれやとネズミをふせぐ手だてをかんがえてみました。

しかし、どれもこれもみんな失敗してしまいました。

最後の神だのみと弁天様におすがりしました。

「弁天様わしらがわが子のように育てたまゆを何とかネズミからお守りくだせい。」
「まゆを食われちまったら今までの苦労は水のあわだんべぇ。子供にもなんも買ってやれねぇ。おら達の生活をお守りくだせい。」
かなわぬ願いと知りながらわらをもつかむ思いで一生けん命手を合わせました。

すると、その晩のことです。いつも、ガタゴトガタゴトとさわいでいるネズミの音が聞こえません。

ふしぎに思ってまゆ部屋をのぞいてびっくりしました。

大きなへびがとぐろをまいていたのです。

それからというもの、ネズミはへびがこわくて出られなくなりました。

村の人たちは弁天様の化身がお守りくださったのだと感謝しながら安心してたくさんのまゆを収穫することができたということです。

『えちむかしばなし』
コミュニティーづくり推進事業実行委員会
(市立依知公民館)より

追記