コダカネ

原文:神奈川県秦野市


秦野市から南へ半道(2km)ほどはなれたとなり町(中井町)に、「コダカネ」と言う所があるそうだ。

むかし、むかしのこと、コダカネ近くの村から秦野のある村にお嫁さんが来たそうな。

お嫁さんのおなかはだんだんと大きくなり産み月も近づいていよいよ里帰り。お嫁さんはおしゅうとめさんに送られて山を越え里を過ぎコダカネまでよっこら、よっこらやって来ましたと。

ところが急にお腹がいたみ出し、お嫁さんは「うんうん」うなってうずくまってしまいました。

びっくりしたおしゅうとめさんは嫁さんに向って、
「今、おふくろさん呼んでくんから、ここから動くんじゃねえぞ。」
「いいかわかったか。」
「わかったか動くんじゃねえぞ。」
と、何回も念を押し押しお嫁さんの実家にかけていきました。

どれほどの時間がたったでしょうか。

おしゅうとめさんに手をひかれるようにおふくろさんがかけつけて来ましたと。

どうしたことでしょう。

あれほど固く「動くんじゃねえぞ」と、言われていたのに、お嫁さんの姿がありません。ふたりのおふくろさんはお互に顔を見合わせガクガクとひざまづいてしまいましたと。

どこにどう消えうせてしまったものやら不思議なこともあればあるものです。

実は、そのコダカネには大きな大きな大蛇がすんでいてお嫁さんと生まれた赤ちゃんもろとものみこんでしまったのですと。

それからそこの場所を「コダカネ」と、言うようになったのだそうです。「コダカネ」って、一体どんな意味があるのでしょうか。

きっと子をだくことができなかったので、「子だかね」と呼ぶようになったのかもしれませんね。

(続いて蛇女房の話があるが、土地の伝説というわけでもないので割愛)

『丹沢山麓 秦野の民話 下巻』岩田達治
(秦野市教育委員会)より

追記