御門、天の下の美人

原文:神奈川県秦野市


今の八坂神社と思われるが、川普請の前夜の打合せの時に酒が出て皆の衆の調子が揚った。何処からともなく気品の高い美人が現れた。カンテラの灯で更に美しく見えた。

彼女がいうのには、 「明日はご苦労様です。一つお願いがありますが、実はお宮の下の穴をよけて掃除をして下さい。」
と頼まれて皆が承知をしたのです。最後に食事に麦飯を食べていい機嫌で別れたのでした。

翌日川普請が始まりました。天の下は川の流れが打当る曲り角は非常に深く水が淀んでいて、ハヤ・ウグイ・ウナギ等色々の魚がいて相当とれました。皆の衆は大騒ぎ、特に大きなウナギまで捕えたのです。

これまではよかったが、大ウナギを切開いたとたん、腹の中から麦飯がでてきて、一同は驚きました。さては昨晩の美人はウナギの化身だったのか、今はなんとも申訳がない思いで一同顔を見合せ、ウナギも喉を通らなかったという。

東道長寿会 梅原俊

『秦野むかしがたり』
(秦野市老人クラブ連合会)より

追記