千間台のいわれ

神奈川県秦野市


大山の菜の花台から菩提のほうに少し下ったところに千間台(せんげんだい)というところがある。その地名のいわれには二つあって、一つは、そこに上がれば秦野が全部見える。千軒の家が見えるから、というもの。もう一つは、そこに千間もあるような大蛇がいて、土地の人を悩ましたことからつけられた名だというもの。(菩提)

『秦野市史 別巻 民俗編』(秦野市)より

追記

菩提のほうではないが、反対の東に山腹をたどった道沿いに浅間祠が祀られてあり、千間台は本来浅間台の意と思われる。そして、そうであるならば、これは浅間さんと蛇の結びつきゆえの話だったかもしれない、といえる。

また、ここでは秦野盆地に入ると急に「大蛇」のサイズが桁外れて語られてくる、という点を指摘しておきたい。足柄のほうでは大蛇といっても数丈だが、秦野では上のように千間であるとか、谷をまたぐなどという(「大蛇」)。

今泉と尾尻(ともに大字)をつなぐという大蛇の話もいろいろに語られるところでもある(「お諏訪さんと尾尻」)。相模においてこういったスケールの大蛇を語るのは秦野に特有ではある。