川梵天・山梵天

原文:神奈川県秦野市


名古木字上原・西沢では、毎年九月八日に梵天講が行われてきた。このとき、昔は特殊な形をした大きな御幣を四本作った。梵天社は上原・西沢間の旧村道から少し山に入ったところにあるが、まず旧道から梵天社への入口に当るところに御幣を一本立てる。ここを「川梵天」という。残り三本の御幣は梵天社の石祠の後ろに立てた。梵天社は、境内地のほか、まわりに七畝ほどの土地を持っているが、この梵天社の地を「山梵天」という。

昔、西沢では火災が多かったので、どの家でも箪笥や長持などに棒をしばりつけておき、いつでも持ち出せるようにしていた。その頃のこと、川梵天の場所にあった杉の木に蛇が巻きついていた。ある人にみてもらったら、いまの山梵天の場所に梵天社を勧請すればよいというので奉祀した。以後、火災はなくなったという。西沢では、家々の軒先にこげた跡が近年まで残っていたといい、上原では、梵天様は蛇だという。(『秦野─郷土研究─』第四号)

付・梵天様:昔は毎年、九月ごろに梵天講をやっていた。当日は赤飯を炊いておにぎりを作り、子供たちに二個ずつ配ったもんだ。(山谷)

『秦野市史 別巻 民俗編』(秦野市)より

追記