五月節供としょうぶ

原文:神奈川県茅ヶ崎市


ありゃあ、なによ。

実直に働いている若者がいた。そこに、
「奥さんにしてくれ。」
って蛇が女に化けてきた。

「いくら一所懸命やっても、自分で食うのがやっとなんだから、飯食わなくてもよかったら、おらへえきてもらってもいい。」
といったら、
「食わなくてもいい。」
っていった。

「そんなら、ちょうど幸いだから、家へ来て手伝ってもらうべえ。」
ところが、友達に、
「いいおっかあ貰った。」
へえいって、まあ自慢に話されたそうだ。そしたら、
「飯食わねえなんて、そんなばかなことあんかえ。」
「じゃ仕事しるふりして、そううっと家へけえって、なんだ、ようす見てみろ。」
って。で見たら、留守の間に一所懸命で、おにぎりをこさえて、はあ、頭へみんなぼっ込んじゃうだってよお。

そいつを見ちゃったんだなあ。すると、
「おれの正体見た。」
って、追っかけ、ひん回しちゃったせえだ。

若者は肝をつぶしちゃって、池のふちまで逃げてきたところ、片方は池だから、それより先は行けねえだってな。そこにそのしょうぶとよもぎ、かやそんなのがはえていただよ。そん中へもどっただと。蛇は大嫌いなんだとな。だから、やっつけちまうべえと思って追いかけて来たけんど、そん中へ、へえることができないんだとよ。

それで、男は助かったとか。

それがお節供の日だったから、みんな方々で、お節供にそれを魔除けにやんだあ。

(下寺尾 臼井勇さん 明治37年生 昭和55年6月)

『茅ヶ崎の伝説』
郷土史研究グループ「あしかび」
(茅ヶ崎市教育委員会)より

追記