人身御供の話

神奈川県藤沢市


神さまに、娘を人身御供に上げたって。

神さまに、十七、八の血気さかりのいい娘を上げないと、その村に災難がくる。だから、一軒、今年はどこで、ことしはどこでと順番に、娘がいる家は上げるわけなんだね。それでないと、村にだいぶ病人ができたり、荒れちまうから。だから、かわいい娘だけどね、番々に、十七、八の娘さんがいるところは番々に、お堂へ上げるわけだ。

大蛇が、いろんなものに変装してくる。いろんなかたちに変えてくる。もとは大蛇らしいですね、その神さまは。

娘さんがいる人は、涙をのんで神さまに上げたんですって。

(石川 入内島松治氏 明治35年生 昭和50年4月)

『藤沢の民話 第三集』
(藤沢市教育文化研究所)より

追記

藤沢市石川で得られた話だが、はたして地元のことをいっているのか、昔々あるところに、という話なのかが分からない。ただし、石川の鎮守は諏訪神社で、化け物が巣食ったという話がある(「化けものの成仏」)。

そちらの話では、化け物が大蛇だとはいっていないのだが、ここに見た話が同系のものだというなら蛇の話であったかもしれない、といえるだろう。諏訪神社の池に大蛇がいたという話はまた別にある(「おふくろさんという石」)。