大庭、宗賢院の龍頭骨

原文:神奈川県藤沢市


藤沢市の北西のはずれ、東海道羽鳥から十分。バスの大六天前停留所近くに、曹洞宗蟠竜山宗賢院がある。昭和六年ごろ太古の竜頭骨ではないかと騒がれた白骨が安置されている。もと独立した蛇骨堂というのが本堂脇にあり、そこに安置してあったが、大正十二年の関東大震災に倒壊したので、その後は本堂に納めたという。もと三觜家のものである。

羽鳥の三觜清さんの祖先が江戸で質屋をしていたが、次々に病人が出るので、気味悪く思い、明治初年故郷の羽鳥に引揚げて来た折、菩提寺の宗賢院へ寄進したもので、全長六十五糎、高さ二十五糎、アゴの長さ四十糎の大きなものである。

今でこそ雨乞はやらないが、日照り続きの時は蛇骨堂から、この白骨を付近の小川へ持ち出し、水をそそいで、雨乞いをしたとも伝えている。蛇骨を祀る社寺は、県下に数多くあるが、このような巨大なものは見当らないし、山号の蟠竜山によく似合った什宝といえよう。また、この寺には源頼朝が富士の巻狩りの帰途大庭城に立寄った際、湯を沸したという大茶釜もある。

『書かれない郷土史』
川口謙二(錦正社)より

追記