大庭、宗賢院の龍頭骨

神奈川県藤沢市


藤沢市の北西のはずれ、大六天バス停近くに曹洞宗蟠竜山宗賢院がある。寺には全長六十五糎ある大きな竜頭骨があり、蛇骨堂に納められていたが、関東大震災で堂が倒壊し、本堂に置かれるようになった。もとは三觜家のものであったという。

羽鳥の三觜の人が江戸で質屋をしていたが、次々病人が出るので羽鳥に帰り、宗賢院へ竜頭骨を寄進したのだという。日照りのときはこの頭骨を持ち出し、小川で水を注いだという。蛇骨を祀る社寺は県下に多いが、これほど大きなものはない。

『書かれない郷土史』
川口謙二(錦正社)より要約

追記

この頭骨は茅ヶ崎市のほうでも知られたもので「茅ヶ崎や香川では大庭(藤沢市)の宗賢院から蛇骨をかりてきて雨乞いをしていた」と茅ヶ崎市史にある。宗賢院の裏は大庭氏の居館であったといい、北側すぐには式内の大庭神社比定社の熊野社もある。

それで山号が蟠竜山とあれば、大庭荘の真中にはさぞや重要な竜蛇伝説があるのだろうと思っていたが、どうもそういうわけではないらしい。上のように、件の大竜頭骨は、江戸の質屋で扱われていたものという(出所は筑波山だそうな)。

ちなみに、上の話のころはそのように本堂に頭骨が置かれてあったらしいが、今はまた龍骨堂が再建され、そちらに納められている。