子どもの寿命

原文:神奈川県藤沢市


狩人が、お宮さまへ遅くなって寝かしていただいた。そうしたら、ほかの神さまが、昔のことだから馬に乗ってやってきて、じゃんじゃんじゃん、夜なかにね、じゃんじゃんじゃんじゃんと鈴の音がしたって。

で、狩人が泊っているところの神さまへね、
「こういうとこの家で、いま、お産があったと。あったが、この子は七つで水で終る」
ということを、やって来た神さまが泊っていた神さまにお告げになった。

そんで、そのあした、狩人がうちぃ帰ったら、うちの人は知らないから、男の子が生まれたって大へん嬉しがっていた。だけど、そのお父さんは、七つまでしか寿命がもたないっていうことを、神さまからきいているからね、自分としても、あんまりよろこばなかったんだね。

そんで、そのうち成長してね、学校へ行ぐようになったわけだ。そうしたら、友だちが誘いに来た。釣りに行かないかと誘いに来た。

その子は水で終るというからね、まあ、お父さんは気ぃつけている。遠くの方にいて、もし大蛇が来たらね、銃で打ち殺そう、もし川へ落ちたら急いで行って助けよう、と言っていたところが、上の方へどんどん一人の友だちが進んで行ったって。だけど、うちの子どもは、ほら、そこへぶっつわったきり、行ったきりでもってね、そこを動かなかったんだね。

そうしたら、やがて、川の水がつぁーざぁーして、音がしてきた。そんでまあ、そうしたら大蛇らしかった。そんで大口あいてね、その子どもを呑もうとしている。

そうして、ほれ来た、と思ってお父さんがね、銃をかまえて打ったらば、ちょうど、その、口ぃあいてるね、とこへと玉が入った。そうしたら、大蛇は二つに裂けてしまった。

「七つで水で終る」と神さまが言ったから、この危ないことが最後でね、それから、その子どもはね、大へん長生きした、という話ですね。

だれから聞いたか忘れたけど、子どもの時分にきいた話です。

(石川 入内島松治氏 明治35年生 昭和50年4月)

『藤沢の民話 第三集』
(藤沢市教育文化研究所)より

追記