深沢の髑髏

神奈川県鎌倉市


延宝三年、かまくら深沢洪水して、所々の山くずれて、さしわたし、三尺ばかりの髑髏あらはれ出し、歯の大さ一寸八分あまりなり。若宮小路の、渡辺小右衛門といふもの、其歯一枚かき取て、髑髏は本の所に埋めし。江の島の縁起に、深沢に大蛇すみしとありしは、これにや有けん。

『新著聞集』神谷養勇軒(寛延二年)より

追記

『日本随筆大成』より引いた。深沢のどの辺りかはわからないが、このような頭骨発見の騒ぎがあったらしい。「江島縁起・五頭竜と弁才天 」の竜蛇かと思われた、という話だ。

その五頭竜は頭が江の島対岸の龍口山になったといい、そこに龍口大明神と祀られたのだが、昭和53年に法人社としては深沢に遷った(龍口山にもお宮は残るが)。もしかしたら、この頭骨発見の場所と遷座地選定が関係しているかもしれない。

周辺では、逗子の池子や川崎の有馬にも、竜蛇の頭骨が発見されたという話がある(「有馬の影取り池」など)。深沢の場合は埋め戻されたというところが独特だ。それだけ畏れられたということか。