蛇に憑かれる

神奈川県平塚市


夢にみて、それこそ困るっていう話は聞きましたね。からまっちゃって、もう、目が覚めても、蛇が口の中にいて困るっていうことは聞きましたね。で、そういうのはね、結局、信心している、昔は、オガミヤさん、オガミヤさんっていいましたけどね、そういう人に診てもらうと、いろいろ自分が思っていることができないと、自分があんまり気が強くって、弱い人いじめになっちゃう、それでその人に、そういう目に合わせんじゃないかって、そういう話は聞いてますよ。(真土)

平塚市史民俗調査報告書6『大野』
(平塚市博物館)より

追記

通じにくいところもあるが、口調のきつい人が、その戒めに蛇が(口に)憑いた、ということだろう。それにしても「目が覚めても、蛇が口の中にいて困る」というのはすごい話だ。今でいうなら、妄想性障害の一種ということになるだろうが、その存在が感得されるような状態が「蛇が憑いた」としてあったのだ。

伊勢原市の大山の方に、蛇が穴から入ってくるからと、耳鼻に詰め物をしていたお婆さんの話があるが(「蛇婆さん」)、おそらく症状としては似たようなものじゃないかと思う。本人にしてみれば、憑いてる蛇は実在するものだろう。

このあたりも怪異の話を見て行く上で難しいところだ。大蛇の祟りで毎晩小蛇の大群が襲ってきた、という話があって、実際の生物の蛇がそんな行動をするわけがないのだから、それは何かの例えだろう、空想の脚色だろう、と見るばかりではいけないということだ。