東林間のデイラクボ

神奈川県相模原市南区


小田急線東林間駅の南側に、大きな窪みがあった。これをデイラクボとよんだ。この窪地はデイラさまという大男が、何かをまたいだ足跡と言われ、もうひとつは大和市のほうにあるという。石井篁他編「相模原市今昔写真帖」の解説によれば、梅雨時や秋の長雨の時季になると野水がたまり、子どもが水浴びできるほどだった。ふだんでも一番低い場所では湧水を柄杓で汲むことができたという。

このあたりには窪地が多く、東林小学校のそばには大きな萩がはえていたのでオギクボ、大和市との境のくぼ地には大きなサイカチの木があったのでサイカチクボと呼んだ。

『相模原市史 民俗編』
(相模原市総務局総務課市史編さん室)より

追記

鶴間地域の巨人の足跡の話。中心となるのは淵野辺の方にあった鹿沼・菖蒲沼の話(「でいらぼっち伝説」)だが、こちらの方まで連なって語られ、大和市に入ってもその足跡は続いていたという。

面白いのは、期間限定で池沼となる窪地であったとはっきりいっているところだろうか。北の各所もデイラ窪であってデイラ沼とかではなく、鹿沼なども普段から満々と水をたたえた沼ではなかったという。あるいはこれは足跡と認定される条件であったかもしれない。